ぐんまのぴっち

8年目理学療法士。3年目まで回復期、4年目以降ずっと総合病院急性期勤務。

理学療法士の目標設定、plan立案について~2~

前回の最終目標の設定から、今回は具体的短期・長期目標をどのように決めるかまで踏み込んで書いていきたい

 

最終目標に関しては「その方の周囲とのかかわりをなるべく病前に近づける」という観点で決めていく。そのためには病前にどのような生活をし、どのように他者とかかわっていたかを評価する必要がある。

 

今回はそれに対し、より近視的な立場から、「いつまでに何をするか」の話をしていきたい。

 

新人や学生の考える介入は、疾患名と今日の状態だけ見て、とりあえず出来そうな運動をピックアップする内容となっていることが多い。

しかし、これでは最終目標までの戦略がない。

 

リハビリテーションにおける戦略とは、患者のリハビリテーションの目標を達成するための総合的・長期的な計画であり、戦術とは戦略を達成するための具体的な治療手技を指すであろう。

 

戦略なき戦術に勝利はない。

 

このため、「今日何するか:短期目標、介入」は「いつまでに何をするか:長期目標」に基づき、「いつまでに何をするか」は「その方の周囲とのかかわりをなるべく病前に近づける:最終目標」ためのものである必要がある。

 

まず、最終目標を例えば、「静かに他人への迷惑とかを気にせずに過ごしたい」だとすると長期目標は2つ考えられる。

1つ目は「自宅内と家事に必要な間の移動の自立、家事動作含めた生活の円滑な遂行能力の獲得」となる。こちらはわかりやすく心身機能の向上を治療や運動療法、環境調整含めたチームでの介入に依って図る目標である。元の生活への復帰が直接の目標となる。

 

しかし、例えば足がなくなってしまった、肺を半分切除した、脳卒中により麻痺と高次脳機能障害が併発し、それも重度だ、といった具合に元の生活をそのまま継続するには予後として厳しい。

もしくは全く不可能ではないが可能性としてもとに戻れないことも想定される。

そうした場合にただ元に戻ることを目標とすると、ギャンブルにならないか。うまくいけばいいが、退院まで期日もある中、間に合わなかった場合のことを考えずにただ一つの目標に邁進するというのが果たして誠実と言えるだろうか。

 

こうした場合、1つ目の目標のために介入しつつ、もう1つ、ダメだった時でも最終目標が達成できるような目標を設定しておくという対応をしておくと、それがセーフティネットとして機能する。

例えば、自分としてこの方が2週間後に安定し、実用的な歩行を獲得できる確率は五分五分だぞ、と感じた場合。

plan1としては歩行の再建のため、筋力、バランスを強化していく。それと同時にplan2として、細かなリハ室内の移動などで車いす駆動が可能としていく。そうして病棟や売店への移動を自分でできるようにしておく。

こうして歩くわけではないが、自分で思ったタイミングで好きな場所に行ける、という状態を早いうちから経験しておく。

すると、意外と歩くという形にこだわらずとも色々なことができる(特に病院内では)。

もちろん狭く段差のある所にはめっぽう弱いが入院中の生活が何とかなるので「これから先」に関してもすべて自分で動けな場合と比較してゆとりをもって構えていられる。

結果として、杖歩行獲得といったレベルまで改善し退院となった場合、そこからさらに地域でのリハビリなどをしてさらに独歩獲得を目指せる。

しかし、万一車いすのまま歩行は実用的とならなかった場合、歩行獲得ができなそう、と分かった時点から車いすでの生活を見据えた調整をしてしまうと、「自分はやってもできなかった」という喪失感を患者さんに味わわせるとともに、時間的にも退院まで余裕のないことになる。

それに対し、車いす上での練習も行いつつ、ある程度動けることを学習した患者さんの場合。歩行練習は継続しつつも、このままの生活での環境調整として介護保険や、身体障碍者手帳、それ以外のサービスなどを提案して車いす上で生活しつつも不自由の少ない生活をまずは目指すという方向へ視野を広げ、本人が歩くということだけにこだわらず人生における幸せが何かを見ながら生きていけるのではないかと思う。

 

歩けないから全く不幸か、というテーマになると、もちろん人によるが、今は電動車いすでも20万円程度で導入出来たり、多くのサービスへの補助もあり、不自由しないこと、のほうが大切なのではないかとも考えられる。

このため、2つ、場合によっては3つのプランを同時に走らせておいて予後が思わしくない場合のプランと、機能的に改善した場合のプランを同時に進めていくような対応が望ましい。

 

今回は長期目標、短期目標についてのテーマで書いていった。次回は、それを踏まえ、予後予測やその日の介入を決める場合の評価、時間の使い方について書いていきたいと思う。